2006年01月01日

通風 悟空の緊箍呪(きんこじゅ)

通風 悟空の緊箍呪(きんこじゅ)
鈴木 啓太郎


 通風とつきあい始めて10年にもなるが、ここ2ヶ月の間ほどひどい目にあったことはない。通風の発作時の痛みといえば尋常ではない。万力で足の親指の根本を締め付けるような激痛が突如としておそってくる。


 はじめての発作を経験したときは、なにがおきたのか理解するのに時間がかかって、4日間は激痛に苦しんだ。5年後に次の発作が起きたときは、救急病院に行き、薬を処方されて事なきを得た。3年後の発作は欧州旅行中だったのでちょっと大変だったが、向こうの医者は手慣れたもので、注射と薬の処方で一日ホテルで休んだだけで痛みは止まった。

 それから2年後の今夏7月、右足の先に違和感を覚えて「アレ、変だな」と思ったら、痛みがじんじんとやってくる。2年前の薬、C薬とV薬が残っていたので、とりあえず、それを飲んだら、少しは腫れたが痛みはそれほどでもなく治まって行く気配。そこで懇意にしている町医者に行き、新しい薬をもらったが、ここからが新たな悲劇の始まりだった。

 この新しい薬では、発作が治まるどころか緩慢に腫れ上がり、痛みもどんどん増してしまうのだ。仕方なく、残っていたC薬を飲むと、一気に効いてくる感じがする。ちなみにC薬は痛風発作時の特効薬とされるが、副作用が強く、常用されることはない。特にひどい下痢がやってくる。すさまじい下痢がやってくると、痛みも治まるなんともいえない薬なのだ。

 ただ今回は、痛みが治まって一安心というわけにはいかなかった。しばらくすると今度は左足に痛みを感じた。これは初めての体験である。医者へ行って、C薬とD薬がほしいというと、なんとウチには無いという。仕方がないので少し大きな病院に行って同じ薬を求めると「そんなふるい薬は今時使わない」といういわれ方だ。では、その医院の処方する薬を飲んでみる。やはり効かない。今度は左足にあの締め付ける痛みが戻ってきた。もう一度町医者に行き、処方箋だけ書いてもらって、やっと薬局で薬を受け取ることができた。薬を飲み、痛みに耐えて、下痢がくると、一安心だ。

 ただしこの薬の処方は15錠までである。早ければ4日間でなくなる。めんどくさいが週に一度は診察を受け、薬を受け取って飲み続けねばならない。そこで夏休みを前に早めに医者に行き、処方箋を書いておいてもらった。休日を挟んでいたので、すぐに薬局に行かなかったのが災いした。処方箋の期日が4日間しか有効ではないなどという知識はこのときまで、私には無かったのだ。薬局に出向いたときはすでに5日目だった。この処方は使えませんといわれて不安がよぎったが、病院は休診中。それでも痛みが治まっていたので「っま、いいか」と思ったのが運の尽き。ストックしてあったC薬を一日1粒ずつ飲んで、それがきれてから、5日目の、またもや土曜日の午後のことだ。「きた」とおもったが、もう遅い。救急病院に行くという手もあるのだが、またまた検査の一からやり直しというのも煩わしい。何とか月曜までもってくれと祈ったが、痛みのピークは月曜の朝にやってきた。激痛の足を引きずって、医者へ行き、処方箋を書いてもらい、薬局へ行き、薬を飲んで、効いてくるまでの数時間、激痛にのたうち回ることになった。最悪なことにこの日は9月定例議会の初日。市長の演説などまったく耳に入ら無いなどというのはどうでもいいが、サンダル履きで(痛みで靴が履けないのだ)議席で苦痛にゆがむ私の痛風話は役所中に知れ渡り、病気とはいえ、なんとなく惨めな気分になった。

 この痛みがやってくると、思い出すのは孫悟空のアタマの金の輪のはなし。三蔵法師が緊箍呪というまじまいを唱えると、きりきりと締め付けるというやつだ。あの話、きっと痛風に違いないと私は信じている。悟空を締め上げるのも、元々は悟空のなかに要因があってのこと、という話はみなさん御存知だろうか。その点は痛風も同じ。体内の尿酸が蓄積して発作を引き起こすのだが、だれもがもってる尿酸が暴れ出すのは、どこかに、私の行いを戒めようと呪文を唱えているやつがいるからなのだ。悔しいがこの痛みにはどうにも勝てない。「お師匠様、なんでも言うことをききます。どうかご勘弁を」と私も思わず叫んでしまう。