2006年01月01日

循環型社会形成推進基本法成立とリサイクルの現実

循環型社会形成推進基本法成立とリサイクルの現実
~ けいたろうの議会だより ~


事業者がリサイクルに向かえない
消費者の関心は高まるか

  四月一日から容器包装リサイクル法の完全施行となった。私の住む上福岡市でもこれまでのビン、カン、ペットボトルなどの分別収集に加えて、プラスチックや紙の容器・包装類までの分別収集が始まった。



どれが「容器包装」?

  一年ぐらい前、議員になって初めて市の担当部と話をしたとき、ごみ処理の係りに着任したばかりの部長は、私の前でたばこの箱を取り出し、セロハンと空き箱と、中の銀紙と吸い殻とを並べて「これを全部分別して、リサイクルするというのですか?」と実現を疑問視していた。「鈴木さんは脱焼却という主張だそうですが、国土の狭い日本で燃やさないごみ処理なんて考えられませんね」といぶかるようにいう。もちろん、全部まとめて焼却処分した方が手っ取り早い。そんなことはわかっている。しかしそれではダイオキシンの発生を抑えきれないというのが、当時起きていた問題だ。

 方針転換は意外に早くやってきた。去年の夏頃には、容器包装リサイクル法の完全実施、廃プラスチックの分別収集に踏み切ることを決めた。これは前年の一二月に始まった厚生省によるダイオキシン規制が、ようやくわが市の担当者にも浸透してきたことをしめしていた。従来のようなアバウトな焼却処理では、ダイオキシン規制ガイドラインをクリアできないことがはっきりし、担当部がごみ問題に対する認識を決定的に変えたのである。エラそうにいわせてもらえば、私たちが消費者団体とともに説得を重ねたことがついに功を奏したのである。

 また、分別の徹底と容器包装リサイクル法の早期完全実施は私の選挙公約の一つだった。国政レベルでの政策化と、それを実現する地方自治体とにはこうしたタイムラグが頻繁に生まれる。その狭間で正当な主張をすれば、議員活動は実に簡単にコトがはこぶというわけである。

 四月から分別の完全実施のためには、遅くとも二月中に市内各地域での説明会を終えなければ間に合わない。大慌てで準備を進めたために、分別の詳しいリストを作るとか、牛乳パックをどうするとか、ティッシュの箱をどうするとか細かい点が詰めきれなかった。不安の中での説明会開始となったが、どこもかしこも地域の集会場始まって以来の空前の超満員となった。これには担当の環境課もびっくりした。市民の関心は予想以上に高かったのである。

 また、この説明会での応答が実におもしろかった。この容器包装リサイクル法でいう「容器包装」とはいったいなんなのか。スーパーで売っている野菜を包むラップは包装だが、同じものでも家庭で冷蔵庫にしまうラップは「包装」に当たらない。費用を負担する当事者が法律上違ってくるために、こんな複雑な事態になる。

 ここでクイズを一つ。クリーニングの袋。弁当の割り箸の袋。書籍の外カバー。CDのケース。このうち「容器包装」にあたるのは一点だが、どれか?。わかった人はエライ。けれどこんな複雑系を背負い込まされる市民にはエライ迷惑な話である。



プラスチックの山

 かくして本年の四月から分別収集が始まったのだが、朝早くから環境課の電話は鳴りっぱなしである。どれが「容器包装」で、どれがそうでないのか。毎日クイズをしなければならない。

 それでも何とか分別をやってみると「容器包装」がいかに多いのか、改めて驚かされる。プラスチック類は重量はともかくカサが断然に大きくなる。「容器」というのは、消費される中身ではなく、運搬されて消費されれば不要となるいわば無用のものだ。それがこんなに多い。いかに私たちの生活が無駄なものに覆われていたのか、実によくわかる。

 これまで当市で行っていた資源回収は月二回である。この態勢のまま四月に突入したが、これではとても間に合わないということになってきた。私のところにも「二週間分もおいておけないよ」といった苦情の電話が相次いだ。ビンや缶の分別収集は月二回で何とかなる。しかし、プラスチックはそうはいかないほど量が多い。これでは「燃えるごみ」の方にみんな突っ込んでしまう。担当課に掛け合うと、直ちに週一回の回収に切り替えるという方針が示され、もう一度回収計画の表づくりからやり直して、七月から実施と切り替えられた。容器包装プラスチックは四月だけで四〇トンという莫大な量になった。収集日が増え、市民に浸透すれば、もっと量は増えていくだろう。

 また四月は風が強い日が多かった。高く積み上げられた廃プラスチックの「容器包装」はいとも簡単に宙を舞う。苦情が殺到して担当課が走り回ったのは笑い話なのだが、これには普段ごみ分別に関わらないオヤジたちにも事態の深刻さを自覚させる効果があった。「何でこんなにプラスチックが多いのだ。何とかしろ」というわけである。

 このようにして分別収集する市民の側に「ごみ減量」への気運が高まるのだが、これがどうにも生産者、メーカーの方に生まれない。ごみの発生抑制に有効なインセンティブが働かないのだ。じつはここに容器包装リサイクル法の最大の問題がある。



作るほど安くなる

  これをペットボトルの例で説明しよう。容器包装リサイクル法で再商品化の義務を負う企業の負担は、じつは「再商品化の見込み量」で決まっている。見込み量は前年度実績で計るから、当然生産量とは大幅に食い違う。昨年の例でいうと、再商品化見込み量は四万六〇〇〇トン、これに対して生産量は四〇万トンぐらいある。だから市町村がいくらがんばって分別収集しても、再商品化のキャパシティが決まっていて、渡す人がいない。このため処理されないペットボトルがうずたかく積まれてしまうのだ。

 しかも企業はペットボトルの再商品化に一トンあたり一〇万強支払う。一本六〇グラムとして六円と計算していい。ところが実際の生産量はその十倍だから、生産量でみると一本あたり〇・六~〇・八円にしかならない。

 これに対して、市町村はいくらかけているか。上福岡市の場合、容器包装リサイクル協会がトン九万五〇〇〇円で処理する費用のうち昨年度は六%を支払った(比率は年度、種別によって異なる)。それだけではない。ペットボトルを圧縮、梱包する費用は市町村が負担する。これがトンあたり四万五〇〇〇円、昨年は約一〇〇トン処理して総額五四六万五〇〇〇円かかっている。これが容器包装リサイクル法による自治体の負担増額分である。このほかさらに分別収集の費用が加わるが、それは一般のごみ処理費の中に埋もれてしまうので分けて計算できない。

 学者などの試算では、処理費用の総額を計算すると地方自治体が負担するのは安くみて一本あたり一八円、企業が負担するのは先のような総生産量で計算して一本あたり〇・六円だという。一八円対〇・六円である。費用負担にこんなに差があっては勝負にならない。ペットボトルは作れば作るほど一本分の処理費用は安くなる。缶やビンより効率がいい。そうくれば発生抑制どころか生産奨励だ。ペットボトルが減らないわけは、便利さや使い勝手だけではないのである。

 ではペットボトル以外の容器包装プラスチック類はどうなっているのだろう。

 構造的には大差がないのだが、上福岡市の場合、容器包装リサイクル協会を通さずに、直接に処理業者に持ち込み、トンあたり三万円の処理費用を払っている。本来「再商品化の義務を負う」企業の負担金はわが市の処理費には含まれない。四〇〇トンの処理を見込んで年間一二〇〇万円の予算となるのだが、これでも協会に持ち込むための圧縮梱包費をかけるよりはずっと安く済んでしまうからおかしなものだ。



新たな再処理方法

  先日、廃プラを持ち込んでいる処理工場を、議員有志で見学させていただいた。元々この会社は、市の焼却灰処分の一部を担っていた会社だった。じつはこの会社に巡り会ったことが、わが市のごみ処理の運命を変えたのである。

 ここではプラスチックを「常圧低温油化」という方法で処理している。詳しくはふれないが触媒に貝殻の炭酸カルシュウムを使い、高カロリーの油を取り出すというユニークな処理を行っていた。どうして廃プラが油になるのか現場で実際に見せられても今ひとつよくわからない。質問すると「何で有機物が何万年もかけて石油になったのか考えてみてください」という答えが返ってきた。屎尿処理から始まった資本金三〇〇万の小さな有限会社なのだが、独自に開発した技術力には相当な自信があるようで、この方法でプラスチックを処理すれば、ダイオキシンは発生しないと胸を張った。

 このほか一般家庭ごみの処理全般にもかなり意欲的で、工場長の語り口にも情熱が感じ取れた。環境問題の追い風を受けて満帆であるのだろうが、いかんせんごみ処理の側の利益は薄い。流通や再生の方が「上だと思って」(工場長の弁)利益を持っていってしまうのである。工場の応接室には、「家庭ごみ商品化フロー」という大きな図が張り出されており、すべてのごみを堆肥、油、塩安、凝集剤に変える工法が構想されていた。まだ実験段階のものがあってすべてが実用化されているわけではない。だが、この図を見て、くだんの担当官がしみじみいった。「この通りやれば、燃やす必要なんかないんですよね」。その通りである。



循環型社会形成推進基本法の概要

 1.形成すべき「循環型社会」の姿を明確に提示
 「循環型社会」とは、
[1]廃棄物等の発生抑制
[2]循環資源の循環的な利用及び
[3]適正な処分が確保されることによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会。

2.法の対象となる廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と定義法の対象となる物を有価・無価を問わず「廃棄物等」とし、廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と位置づけ、その循  環的な利用を促進。

3.処理の「優先順位」を初めて法定化
 [1]発生抑制
 [2]再使用
 [3]再生利用
 [4]熱回収
 [5]適正処分との優先順位。

4.国、地方公共団体、事業者及び国民の役割分担を明確化
  循環型社会の形成に向け、国、地方公共団体、事業者及び国民が全体で取り組んでいくため、これらの主体の責務を明確にする。特に、
  [1] 事業者・国民の「排出者責任」を明確化。
  [2] 生産者が、自ら生産する製品等について使用され廃棄物となった後まで一定の責任を負う「拡大生産者責任」の一般原則を確立。

5.政府が「循環型社会形成推進基本計画」を策定
  循環型社会の形成を総合的・計画的に進めるため、政府は「循環型社会形成推進基本計画」を策定。

6.循環型社会の形成のための国の施策を明示
                                
注=同法は容器包装リサイクル法など具体的な政策を定めた個別法を統括するもの