2006年01月01日

「ダイオキシン類対策特別措置法」施工から半年

「ダイオキシン類対策特別措置法」施工から半年
埼玉県所沢市からの報告4


住民運動が特措法をひき出した くぬぎ山の煙は止まった

 「ダイオキシン類対策特別措置法」が成立してちょうど一年。同法施行から半年が経過した。この間、様々な議論と批判の的となった日本版「循環型社会法」をはじめ、ゴミやリサイクル・廃棄物処理に関する関連六法案が相次いで成立した。

 これらの法整備が「ダイオキシン類による汚染の防止及びその除去」に、いかほどの効力を発揮したのだろうか。ダイオキシン汚染告発の震源地であった「くぬぎ山」からのレポート。



けいたろうの議会だより  上福岡市議会議員 鈴木啓太郎
ゴミ処理の広域化を認めるべきか合併モラルハザードの形相

 「くぬぎ山」に一般ゴミの新しい最終処分場をつくる計画がもちあがっている。これにはいささか関わりが深い。というのは、二〇〇二年から、わが上福岡市は三芳町とのゴミ焼却の合同処理をすることになっていて、くぬぎ山に計画されている最終処分場は三芳町の焼却灰を埋め立てるものだからだ。

 三芳町の担当者に問い合わせると、焼却については合同で処理した後、持ち込んだゴミの分量に応じて、つまり三芳町の分だけをここに持ち込むという。現実的にそんなことは不可能だから、当面は費用負担を案分してということらしいが、いずれにせよ、私たちのゴミの一部がくぬぎ山に持ち込まれることに変わりはない。

 くぬぎ山からわずかの距離にある私たちの地域では、集中する産廃施設からのダイオキシン汚染による被害を心配していたのだが、上福岡のゴミを持ち込むとなれば、今度は一転して加害者になりかねない。

 だが、焼却灰を遠い地方へ持ち込むよりも「自区内処理」の方が妥当であるという考えもある。三芳町、上福岡市の合同処理は、そう遠くない将来に他の市町を加えて一部事務組合による広域処理に、さらに市町村合併までが検討されているのだから事態は複雑である。くぬぎ山が「自区内処理」の原則に相当するのかどうか、大いに悩まねばならないところなのだ。

 そもそも、ゴミ処理を合同でおこなう話は、ダイオキシン規制との関連で始まったものである。

 政府がダイオキシン規制法に先立ち実施したいわゆる「ガイドライン」では、一般ゴミの焼却施設を、イ)二四時間連続運転、ロ)小規模施設から広域焼却施設への転換、ハ)平成一四年以降、焼却炉の排出を新炉で〇・一ng 、既設炉(連続)で一ng以下に規制するというものであった。

 これを受けて、わが市でも広域処理が検討されてきたのだが、他の自治体との間に話はまとまらず、とりあえず、一四年度からの規制をクリアーするために、くぬぎ山にある三芳町の炉は廃止、上福岡市の炉を二四時間の連続運転に切り替え、排ガス対策の大工事をおこなって合同処理を進めるということで決着したのである。

 この問題は、昨年九月から一二月議会にかけて議論の焦点となり、上記の結論が出されたものの、広域化対策としては先延ばしになった。共産党は「自区内処理」を掲げて合同処理に反対。保守系の会派からは金銭による補償問題が取りざたされた。

 原則からいえばここで「脱焼却」とか「燃やすな」というべきなのだろうが、それだけではどうにも説得力を持ちそうにない。そこで、私は「広域化の規模が小さすぎる」という反対論を展開した。ごみ減量の努力を重ねた上で「どうしても残る最後のゴミをやむなく燃やすことは承認する」。しかし、現状で計画されている炉はそれに見合わない。欧米の水準なみに焼却炉を減らすことがガイドラインの本旨だ、と主張した。こういう議論の仕方がよいのかどうなのか、みなさんの批判を受けたいところだ。

 この問題を考えるに三つの視点を提案しよう。



ゴミ減量への視点

 ひとつは、広域処理に先立ちゴミの減量策をいかに効果的に進めることができるかという問題。もう一つは、焼却灰に含まれる有害物質の質と埋め立ての量。そして、新たな需要増となったダイオキシン対策による焼却施設の改善もしくは新設という問題である。
 ちなみに、上福岡市の場合、現有ストーカー炉をガイドライン規制に沿うものにするには、排ガス対策として「バグフィルター」の設置などが必要になるが、これが嘘みたいに高いのである。

 当初の見積もりでは総額で四〇億円という話が流れて、議員たちを震撼させた。昨年度の政府統計資料でも、都市部のゴミ処理で排ガス対策費は一四〇〇億円を突破した。これが新たな公共事業となって、おおかたは自治体の借金として背負わせられるのだからたまらない。

 これに加えて、焼却灰の溶融固化(ガス化溶融)などの対策を盛り込んだ施設はさらに価格が跳ね上がり、しかもどうやら技術は未完成である。「何でも燃やせて溶融化すれば焼却灰は無害、極少になる」というふれこみで導入を決めているところもあるが、現段階で手を出す自治体は少ない。

 となれば、焼却灰の質を改善するのにはどうすればいいのか。現段階では塩ビやプラスチックをのぞくなど分別の徹底が最善である。

 かりに、三芳町が最終処分場を作ったとして、上福岡の炉で燃やした灰が「最終処分場の維持管理基準」(ダイオキシン規制法で定められた)に見合うものになるのかどうか、現状では大いに疑問である。排ガスが規制をクリアーしても、焼却灰の質まで改善されるわけではない。自慢する話ではないが、上福岡の焼却灰は質が悪く、埼玉県の公設処理場から突き返され、やむなく手作業で二次処理を施さねばならないのが実状なのだ。こんなものをくぬぎ山に持っていくなどというのは、許されるはずがない。

 できうるならば、高額の借金であまり役に立たない焼却炉など買いたくない。結局、そのためにもゴミの減量と分別が不可欠という話になるのだが、それが市民と自治体に押しつけられる現状もおもしろくない。どうすればいいのか。大いに悩むところなのだ。

 前向きな話もある。各地で焼却場の建設規模が軒並み縮小されているのだ。住民の反対を押し切って三〇〇トン規模の炉を作るとしていた所沢市も、二三〇トンに縮小修正した。ゴミ減量と循環型社会への転換という命題は、わずかながら、私たちの社会に影響を及ぼし始めている。



くぬぎ山住民 渋木幸子さんに聞く
インタビュアー 鈴木啓太郎
~ 住民投票がまちの未来を決めた ~
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インタビューを終えて

 梅雨の晴れ間の蒸し暑い午後にくぬぎ山を訪ねたが、雑木林をくぐり抜けるとひんやりとした風がとても心地よかった。しかし、かつての産廃施設は殆どがここに居座ったままだ。時折、プラスチックを焦げ付かせたいやなにおいが漂ってきて、問題は未解決なままであることを知らしめる。

 包囲の輪は狭まってきている。くぬぎ山に限っていえば、渋木さんの言うように、人工林の保全に関して埼玉県も前向きではあるようだ。ダイオキシン類規制法もできた。しかし、曖昧さは残されたままである。量は減ったとはいえ、産廃を満載したダンプは次々と運ばれてくる。埼玉県に流入する産廃の総量に変化はない。曖昧な法規制を実効あるものにしていく、住民の監視が欠かせない。